東北事情あれこれ

先月の森林学会の際、東北の現在についても見聞きして参りました。
今回は仙台~盛岡~遠野を回りました。
仙台港へ行くと、フェリーターミナルには津波の到達線が掲示してありました。

ターミナルは311のとき、テレビに映っていたイオンの建物が見える場所にあります。
宮城県庁と仙台市街頭で聞き取りを行ったところ、
港の周りなど目に見えるところは復旧しているとのこと。
しかしいわゆる被災地の復旧は全く進まず、
県の方でも実情把握などに要する人手が足りていない、とのことです。
仙台市街の目抜き通りは繁盛している様子です。
ただ、ビル群はところどころ今でも修理工事をしているものがありました。

 仙台での聞き取りの後、遠野市に向かいました。
遠野馬搬協会という、馬で間伐材を搬出する取組があり、
協会の岩間さんの施業にお邪魔して色々見せて頂きました。
本日の作業班はこちらの三名と一匹です。

馬はばんえい競馬にも出るような大きなものです。
作業班の持っている器具は、
マサカリのようなものが木にさしてそりに集めるためのもの。
そりは馬が引き、頑丈で粘りのある木で作られています。
確かコナラの木で、これでなくては実用に耐えないのだそう。
それぞれ専門の職人が作っていましたが、
今後は高齢化により作れなくなる事が危惧されています。
この馬搬では一日10㎥程度を運びます。

お昼の休憩中の写真です。
コスト面での問題ですが、岩手県では間伐材を薪にしたものに補助を出し、
㎥3000円で買い取っています。すると三人分の日当が出て、
機械ならば燃料に当たる分は秣で済み、
間伐材からそれぞれの暖房に使う薪も出るため、
今の木材価格では中々割の良い仕事なのだそうです。
この日の遠野は昼からは晴れましたが、
午前のこの辺りは吹雪が吹いていました。
日本の林業では欧州モデルはすなわち機械化、という感がありますが、
ドイツでも素材生産の2.5%ほどがこの馬搬で行われている様です。

このように専門誌もあります。
左がドイツのもので、右がイギリスのものです。

この施業地は林分としても、光がよく入り下層植生の充実したものになっています。
馬搬協会としては、馬搬での施業を行った森林と、
車両系での施業を行った森林との保水力の違いも調べたい、など、
普及の他にも様々な目標を持って活動している様子が伺えました。
遠野馬搬協会では、英国馬搬協会会長などの人士を招待のうえ、
本年九月に遠野市でシンポジウムを開催する予定とのことです。
日本の森林経営のあり方を考える上でも、興味深い集まりになると思います。

盛岡では鈴木さんが書かれた通りに行動しました。
その他に岩手県庁にお邪魔して、林業振興課で県の林業などについてお話を伺いました。
岩手でも宮城同様、被災地だけは手が付けられない状態にある様です。
岩手において顕著なことは、太平洋沿岸は山が海に迫っているために、
その様な場所で被害が大きく、かつ土地や森林の所有者が多く亡くなられたので、
土地の整理が進みにくいという事情があります。
その様な林地に対する経営体の育成の為に、
岩手県では「地域けん引型林業経営体育成対策」などを策定し努力している様子でした。
再訪の折には、県が行った施策など詳しく調べて、
より詳細にフィールドワークをしてみたく思います。

D1 金山

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